『青春』を全力疾走する少女たち 「宇宙よりも遠い場所」1話~2話感想
「女子高生、南極に行く」という中々にパワーのあるワードと、シリーズ構成・脚本がラブライブ!の花田十輝というテロップを見て「まあ、一応見ておくか」位の軽い気持ちで見た本作だったが、まあ結論から言うと完全にやられた。
「何かしたい!」「けれど失敗が怖くて一歩踏み出せない……」
青春時代なら、きっと誰もが一度は抱く悩みだと思う。
例えば、理由もなく旅をしてみたい。
例えば、こっそり学校をサボってどこかに出かけてみたい。
例えば、一つの大きな夢に向かって邁進してみたい 。
「まだ自分の将来の夢はないけれどやる気だけはある」「けれど失敗は怖くて一歩前に踏み出せない……」「そうやって気づけば高校生活が終わっていて……」
そんな苦い経験をした、もといしなかった僕たちの代わりに、彼女たちは全力で青春を駆け抜けてくれる。
主人公の『玉木マリ』は、まさしく『何もできなかった僕たち』の予備軍である。
やる気はあるけれど、失敗を恐れて一歩前に踏み出せない。
そもそも何かしようにも何がしたいのかを見つけられない。
学校サボってどこかに旅をしよう! と、実際にいつもと反対方向の電車に飛び乗ってみても、本当に行きたい場所が思いつかず、結局学校に来てしまう。
そして適度にバカ。
そんなこんなで何者にもなれないままの彼女は、ある日一人の少女と「運命的な出会い」を果たす。
『小淵沢報瀬』、とある理由から「南極に行く」という目的のためにただひたすら突っ走る少女である。
必死こいて稼いだ100万円という大金を落っことして泣き喚く。
自信をもって立てた計画は穴だらけ。
クールそうな見た目からは思いもよらないくらい感情的で恐ろしく行き当たりばったりなまま突っ走る少女は間違いなく主人公同じくバカである。
ただ一つ、「目的があること」を除いて。
そんな報瀬を見て、そんな報瀬に「一緒に行く?」と誘われ、マリはついに報瀬と一緒に夢に向かって『いつもと反対側の列車に飛び乗る』のである。
劇中でも報瀬が言うように、普通に考えて「南極に行く」という目標は到底他人から理解されたり認められたりする行動ではないだろう。
宇宙飛行士になりたいとか、アイドルになりたいと同じである。
社会は常に学校に行けと言い、地に足の着いたの夢を追えと言う。
きっと普通はそれに従うし、従わなければたいていの場合社会に出たときに大きなしっぺ返しが待っている。
だから皆は『いつも通りの電車に乗り続ける』。僕もそうだった。
しかし彼女たちはこの作品の中で、『もし反対方向の電車に乗ったらどんな景色が見れたのか』をこれでもかと見せてくれる。
時に悪だくみがバレて、新たに加わった仲間と共に夜の歌舞伎町を全力疾走することもあるだろう。
時には失敗してしまうこともある。
だがそれも、青春の輝かしい1ページになり得るのだと、このアニメは力強く語っているのだ。
さて、アニメ本体としては作画良好、細かい演出やテンポもばっちり、キャラもえぐみがなく、とにかく背伸びしただけの普通の高校生たちが全力で夢に向かって突き進むアニメである。(高校生が必死こいて貯めた金が100万というのが何とも絶妙な金額で好き)
脚本の花田十輝、というかラブライブ!特有の「言いたいことを全部言わせる」「出会って速攻決意表明」というスタイルや演出優先の展開がアニメの雰囲気にも非常にマッチしており、爽やかな青春ものとして今のところかなりの完成度を誇っている。
特にこの2話の「夜の歌舞伎町を3人で全力逃亡するシーン」は作画や演出、BGMも相まって間違いなく今まで見た青春ものの中でもトップクラスの名シーンだった。
(ホント、マジで、このシーンの良さをいろんな人と共有したい……見て……)
南極という要素や、少し独特なキャラデザでとっつきづらいという人も多いかもしれないが、間違いなく今期見た作品のなかでは「りゅうおうのおしごと!」や「ヴァイオレットエヴァーガーデン」よりも強く個人的にお勧めしたい一作である。
まだ見ていない人は是非、今期のチェックリストに加えてほしい。