くりくりの雑記帳

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レディ・プレイヤー1は映画館で見ないほうが良いかもしれないという話、とか諸々【レディ・プレイヤー1感想】

 

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 というわけで『レディ・プレイヤー1』である。

 

ガンダムVSメカゴジラ」が大スクリーンで見られる、レトロゲームや映画ネタ盛沢山のオタク向け映画、と話題になっていた今作。

 僕自身、「スピルバーグがそんなもん作ったんなら見るしかねえよなあ!」と思いつつ意気揚々と映画館に足を運び、そしてものの見事に泣かされて帰ってきた。やっぱりあのおじいちゃんのつくる映画はすごかった。

 

真にリアルなオタクたち

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 この作品のあらすじはいたってシンプルである。要は「VR版ワンピース」だ。

2045年。環境汚染や気候変動、政治の機能不全により、世界は荒廃していた。そのため、スラム街で暮らさざるを得ない状況に陥った地球上の人口の大半は<オアシス>と呼ばれる仮想現実の世界に入り浸っていた。

オアシス内では現在、創始者であるジェームズ・ハリデーが亡き後流された遺言により、勝者にはオアシスの所有権と5000億ドル(日本円で56兆円[4])相当のハリデーの遺産が授与されるアノラック・ゲームが開催されていた。ハリデーがオアシス内に隠したとされるイースターエッグを探すエッグ・ハンター、通称ガンターが日々3つの鍵とそれを手にするための関門となるゲームに挑んでいた。

オハイオ州のスラムに住む若者ウェイド・ワッツも勝者となるべく日々奮闘していたが、ゲームにはオアシスの管理権を欲する世界2位の大企業IOI社社長、ソレントが送りこんだ参加者もいた。ウェイドは第一の関門を突破するが彼の現実世界にも危険が及び、レジスタンスのアルテミスやオンライン仲間たちとともにソレントに立ち向かっていく。 

レディ・プレイヤー1 - Wikipedia

 

 

 さて、あらすじを読んでもらえればなんとなくわかると思うが、この作品には二種類の人間が存在する。

 それは「ゲームを楽しんでいる人間」「ゲームを楽しんでいない人間」である。

 これは単純に敵味方の括りではない、少しネタバレになってしまうが、ゲームのプレーヤーたちの中にも、復讐や金稼ぎといった別の目的を持った「ゲームを楽しんでいない」人間がいる。逆に、敵であるIOI社のゲームの解析を行う技術班*1にはハリデーが鍵を隠したゲームを探すために嬉々としてゲームや映画のうんちくを語る「ゲームを楽しんでいる」オタク達がいる。

 通常、特に日本の映像作品に登場する主人公以外のオタク像は「チェック柄、シャツin、バンダナ、デブ、リュックサック」といったいわゆる一昔前のカメコスタイルで「ビジュアル的記号化」をされる。つまり「オタクという一つの集団」にされてしまう。

 だがこの作品に登場するオタクたちはそういった「ビジュアルで統一された集団」ではなくただただひたすらに「ゲームを愛する者たち」と描かれており、それ以外の共通点のようなものは全くない。国籍はバラバラだし立場も違う、味方側はおろか敵側にもそういった人種は存在する。

 何故か全員コミュニケーションがヘタだったり、何故か全員眼鏡をかけているようなことはない。ただ「ゲームの好きな」なだけなのだ

 だからこそ、そこには既存の作品にあるような「作られている感」はない、本当に、本当に自分たちと同じ様々なオタクたちがゲームを通じて笑って泣いて楽しんでいるのである。

 

すべてのオタクのための作品

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  この作品で好感を持ったところと言えば、クリエーターやゲームのプレイヤーたちがイラつくポイントを敵キャラが見事に抑えていたのが素晴らしかった。

 例えば、作中の会話で分かるがこのオアシスでは「広告」や、課金額などに応じたランク制度(楽天カードとかのゴールド会員とかシルバー会員とかのアレ)が創造主であるハリデーの意向で一切廃されている。作中の敵、ソレントはゲームを乗っ取ってこういった機能を解禁しようとしているわけである。

 他にも「イヤホン越しのニワカ知識披露」などソレントのヘイト稼ぎポイントはいくつかあるが、それらのほとんどがクリエーターとプレイヤー両方を敵に回すようなものなのである。

 そう、これはあくまでゲームの出題者であるハリデーと回答者であるプレイヤーの戦いを描いているのではなく、「ゲームを愛する」者と「ゲームを愛さない」者同士の戦いを描いているのだ。

 この作品においての敵はあくまで「ゲームを愛さない」者たちである。

 クリエーターという「オタク」とプレイヤーという「オタク」は敵対しあっているのではなく、理解し尊重しあっているのだ

 

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 きっとみんなもオタクであるというのなら、大好きなアニメや映画があるだろう、ゲームの最高難易度のボスを倒して歓喜に震えたことがあるだろう、作者がこっそり入れた隠し要素を自力で見つけてにやけが止まらなかったこともあるだろう。

 自分が書いた小説や漫画が評価されて喜んだものもいるだろう、自分が作ったゲームを楽しそうにプレイする人を見てにやけが止まらなかったこともあるだろう。

 そういった経験を持っているなら絶対に楽しめるはずだ。

 だが、それこそ今作の敵であるソレントのようなゲームや映画を楽しまない人間には「嬉しいのはわかるが、どうしてそこまで感動できるかわからない」

 だからこそ、この作品はオタク向けなのである。*2

 

画館で見ないほうが良いかもしれないという話 

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 さて、ここまで書いたところで本題である。一つ思ってしまったことがある。

 というのもこの作品、ひょっとしたら「映画館で見ないほうが良いかもしれない」というところなのだ。

 何故か? そう思う理由は二つある。

 一つは「映画館だと叫べない」からだ。

 この作品には何度も言うように名作映画のパロディやカメオ出演が大量に存在し、オタクなら首がちぎれるくらい縦に振りたくなるような展開やセリフが数多く登場する。

  もし家なら一時停止して、わからないネタをスマホやパソコンで調べることもできるし、自分の大好きな作品のネタが出てきたときに散々悶えることが出来るが、映画館だとそうはいかない。スマホは取り出せないし、悶えたら周りの迷惑になってしまう。

 つまり酒を飲みながらテンション高めで「あー! それ知ってるー!」とか「あはははは!!」と笑いながら、それこそ家で据え置きゲームをするような感覚で楽しむ方が楽しい気がするのだ。

 

 そしてもう一つ、それは「オタク仲間数名と見る方が楽しそう」という点だ。

 今回、僕は友人Aと二人でこの映画を見に行ったのだが、当然上映中は会話できないし、互いに知っている作品が出てきても盛り上がることは出来ない。

 見終わった後に感想を言い合うことは出来るが、やっぱり出てきた瞬間に盛り上がりたいのが心情だろう。というかそうだった。

 ゲームマニアと映画マニアを加えて4、5人で見れば、おそらく拾えないネタはほぼないだろうし、共通のネタが出てきたら間違いなく燃える。何よりオタク同士の友情や信念がキーパーソンとなる今作は一人で黙々と見るより、上の外国人コラの元画像のように友人たちと見たほうが盛り上がるはずだ。

 映画の興行的にはレンタルや円盤で見るよりは映画館に通う方が良いのだろうが、まあ一オタクとしてそういった面倒なことを考えてしまったのである。

 もちろん、映画館で見るメリットも山ほどあるし、一人で静かに見る方が好きです(半ギレ)という人もいるだろうし、白熱した戦闘シーンやレースシーンはどう考えても映画館のスクリーンと大音量のスピーカーで観覧した方が良いに決まっている。だが、なんというかまあ、思ってしまったのだ。

 

「ああこの映画、友達とうんちく語り合いながら見てえ……」、と

 

 まあ楽しみ方は人それぞれだし、「なら映画館で見た後みんなで見りゃいいだろ」というごもっとな意見もあるだろうが、いやまあほら初見で「うおおおおおおお!!!」とか叫びたいじゃん? *3

 そういうことである。

 

結論「見ろ」

 どんな見方をするに関わらず、この作品はぜひとも見てほしい。

 とてもじゃないが71歳のおじいちゃんが作ったとは思えないくらいの熱量と瑞々しさがある作品である。計算が合わない。流石スピルバーグと言わざるを得ない。

「元ネタの作品見てないからわかんないよー」とか「アニオタだからゲームネタとか映画ネタはあんまりなー」という人も心配いらない。勿論既存作品のリスペクトは山のようにあるので知ってた方が楽しいのは事実だが、そもそもそんな楽しみ方だけをするならポプテピピック*4を見ればいい。

 この作品はそれだけでなく、全力で頷きたくなるようなオタクたちの矜持がこれでもかと詰めこまれているから最高なのだ。

 映画、ゲーム、アニメ、漫画、何でもいい。

 もしあなたがポップカルチャー大好きなオタクであるのなら、見てほしい。

 

 なぜならそんな君こそが、この物語の主人公「プレイヤー1」なのだから。

 

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「This is for ”you”(これは”あなた”の映画です)」

 スピルバーグは言っていた。そしてその言葉は真実だった。 

 

 

 

 

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*1:ぶっちゃけ、映画を見ていて一番混ざりたいと思ったのはココである。仕事とはいえ大の大人たちがハリデーの来歴を紐解きながら全力で、しかしどこか楽しみながらゲームに臨む姿は憧れを感じてしまう

*2:勿論、そうじゃなくても楽しめるとは思う、ただ映画館から出る際「元ネタわかんないからよくわかんなかった」「ゲームに熱中しすぎでしょ」という声がマジで聞こえたのでまあそういうことなのかなあと思った

*3:初見で驚く人の反応を見るのもすげえ楽しいので、「自分だけ見てほかの仲間が見るのを全力で阻止して家に連れ込む」のもアリかもしれない、僕はそうしようと思っている

*4:クソクソ言われているアレだが、作品のリスペクトという点においてはあれほど真面目にやってる作品もなかなかない