ヴァイオレット・エヴァーガーデン5話感想
『ヴァイオレットエヴァーガーデン』 5話より
「流石京アニ、絵がきれいだな~」という感想以外持てないまま、まあ話題になってるし京アニだからと惰性で見続けていた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』だったが、ついに僕の中でも確変が起きた。第5話だ。
この回で今まで僕がこのアニメに抱いていた印象が一気にひっくり返ってしまった。
『ヴァイオレットエヴァーガーデン』 5話より
今回の依頼人は異国のちょっとわがままで勝気なお姫様「シャルロッテ姫」である。
依頼の内容は「これから結婚することとなる隣国の「ダミアン王子」への公開恋文*1の代筆」というもの。
「あのヴァイオレットちゃんにそんな国家単位の大仕事出来るわけないだろいい加減にしろ!」と思いきや、作中時間的には前回から数か月ほど経過しているようで、郵便局の経営も安定していたり、ヴァイオレットちゃんの腕もめきめき上達しているご様子。*2
恋文なのに報告書のような文を書いたり、直截にものを言いすぎて依頼人を怒らせてしまうようなポンコツヴァイオレットちゃんはもうおらず、
ダミアン・バルドゥール・フリューゲル様。私がその名前を言葉にするだけでも、こうして文字として表すだけでも心が震えると言ったら貴方はどう思うのでしょうか?
私はこの花の都からあらゆる事柄から貴方を結び付けて溜息を漏らす毎日なのです。
例えば…それは夜空に浮かぶ月を見上げた時。私は欠けた月をひらりと舞い落ちる花弁のようだと思います。
そして次にこう考えるのです。貴方は同じものを見て、何を思うのかしら、と……。
なんて如何にもポエミィな文章を書くことができる敏腕自動手記人形ヴァイオレットさんに成長していた。
しかし、成長すれば当然それ以上の困難にぶち当たるのが世の中というもの。
今回は今までのどの依頼よりも複雑な事情があった。
「私、この婚姻が嬉しくて仕方ないの。だけど…あの方はどうなのかしら。本当は心に決めた方がいらしたのではないのかしら?歳だって十も離れているわ……お話が合わないかもしれない……」
こういうタイプの話は「政略結婚したくない! 私は愛する人と結婚したい!」と姫様が駄々をこねる→本当の意中の相手に恋文を送るパターンが定番だろう。
だが今回の主役であるシャルロッテ姫はそうではない。
『ヴァイオレットエヴァーガーデン』 5話より
育ての親である女中との別れを悲しんではいるものの、婚約自体は好意的にとらえている……それどころか四年前に出会った意中の王子と結ばれるため、自分の地位を利用しつつ根回しして自分とその王子が政略結婚で結ばれるように仕向けていた。*3
ただそこは14歳の年端もいかない少女、「相手が本心どう思っているのか、10歳も年の離れた自分との結婚を喜んでいるのだろうか?」それが彼女の本当の悩みであった。
自分が初めて出会った時の「粗雑ながらありのままの自分を受け入れてくれた王子」の本心が代筆者同士による多くの国民に向けた美麗な文章のせいで全く見えてこないことに、彼女は苛立ちを覚えていたのである。
これは今までの4話の任務とは違い、そのことを彼に伝えればいいわけではない。
それだけでは結局代筆者からの美麗な文章が返ってくるだけ。今回の件は依頼人であるお姫様だけでなく、相手の王子にも心を開いてもらう必要があるのである。
おそらく、これは4話までのヴァイオレットには解決が難しい依頼だっただろう。
しかし、成長したヴァイオレットは一味違った。
『ヴァイオレットエヴァーガーデン』 5話より
「我々自動手記人形はお客様にとっての代筆のドール。役割以外の仕事は致しません」
「ですから…これからする事は私の出過ぎた行為です。弊社C.H.郵便社と無関係とご承知下さい」
「貴女の涙を…止めて差し上げたい」
さて、ここからヴァイオレットの機転とシャルロッテ姫の努力によってお話は転がっていくのだが、未見の方はぜひネット配信などでこの続きをその目で確かめていただきたい。
あえて言うなら、この先の「恋文の殴り合い」や「月下の告白」と「ラストシーン」はシンプルながらもなかなかにハラハラさせ、そして泣かせてくれるものとなっている。
今回は登場するキャラが悩みに対して真っ向からぶつかっていくストーリーであったり、中盤の駆け抜けるような爽快感もあって、非常に清々しい回だった。*4
また5話は「親子ネタ」「勝気ながらも年相応なお姫様」「飄々とした王子」など、個人的に「特攻」となる要素が多かったため、ここまでぶっ刺さったのかもしれない。
何にせよ、今回は今までの微妙な個人的評価が一気にひっくり返るほどの面白さだったことは間違いない。
「途中まで見たけどあまり合わなかったなー」と視聴を切った方も、ぜひ五話まで視聴を再開してみてはいかがだろうか?*5
ネタバレ感想 反転↓
しかし今回の本音になってからの文通、ちょっと意地悪な見方をすると王子の方は初めシャルロッテ姫に興味がなく、やんわり断ろうとしているようにも取れなくもない。
姫様の押しの強さや勝気さ、そして最後の「遠馬なら負けません!」の一言で根負けして(というか惚れ直して)プロポーズに踏み切ったという展開だったら個人的にはさらなる加点評価をしなければならないのだが、いかがだろうか。